プット・オプション売りの2つのメリットと3つのデメリット

プット・オプションの売りについてです。オプションの売りにはコールとプットがあります。
しかし、板を見るとコール・オプションはプット・オプションに比べてATMからの離れている価格が同じでもプット・オプションの方が高いプレミアムを付けています。そのため、プット・オプションの売りは魅力的に見えます。
今回はそんな魅力的なプット・オプションの売りについてメリットとデメリットを見てみます。なぜプット・オプションのプレミアムが高いのか?その理由を知って適切なリスク管理の下で取引すれば利益を上げることが可能です。主にOTMのプット・オプションを対象にした説明です。
目次
プット・オプション売りのメリット1:時間で儲けることが出来る
オプションの価値はOTMの場合、「時間的価値」なので、時間が経つにつれてどんどん価格が落ちていきます。これを利用して利益を上げるのがオプションの売りのメリットです。最終的にSQが行使価格より高ければ放っておいてもいいので楽です。
プット・オプション売りのメリット2:高い収益性がある
プット・オプションはコール・オプションと比べ(ATMからの距離が同じ時)、高いプレミアムがついています。このため、コールオプションの売りと比べて売りによる利益が高いです。OTMのままSQを迎えてくれれば0円になってくれるわけですから、是非とも売りを入れたいところです。
売っているオプションがITMにさえならなければ何もしなくても利益が上がるなんだかよさげなポジションです。オプションの売り、特にプレミアムが高くATMから離れているプット・オプションの売りはとても魅力的に見えます。
プット・オプション売りのデメリット1:利小損大
オプションの売りは「利益限定取引」なので、売却時の価格以上に儲けることはできません。一方、損失は無限大です。実際にはプット・オプションの売りポジションは売却したオプションの行使価格x1000円が最大損失にはなります。
SQまで耐えられれば一応は損失も限定はされています。しかし、多額の証拠金が必要になり途中で倉庫金が足りなくなる可能性が高いです。
利小損大になる例
例:先物価格が18,000円の時に権利行使価格17,000円のプット・オプションを200円売ってSQが16,000円になった時
この場合80万円の損失になります。計算式:(17000-16000+200) x = 80万円
先物買いとプット・オプション売りの関係まとめ
相場 | 先物 | オプション |
急騰 | ○○ | ○ |
上昇 | ○ | ○ |
変わらず | △ | ○ |
下落 | × | × |
急落 | ×× | ××× |
下落、特に地震やテロなどでリスク回避的に売りが殺到する局面では、プット・オプションセラーの買戻しで需給関係が崩れ、IVが急上昇するので要注意です。
プット・オプション売りのデメリット2:証拠金
ネイキッドでプット・オプションを1枚売るとFOTMで10万円程度からITMに近づくと100万円以上まで幅はありますが証拠金がかかります。これはコール・オプションと同様です。
また、IVがコール・オプションより高いためATMから同じだけ離れていてもプット・オプションの方が証拠金が高くなるので要注意です。さらに、この証拠金の額もプット・オプションの場合は特に相場次第で激変しますので注意が必要です。コール・オプションの売りの場合より証拠金に余力を持たせながら運用をしましょう。
大幅下落時にFOTMのプット・オプションを売っていて、「証拠金が足りなくなり、泣く泣く買い戻して結局SQまで一度もタッチしない」なんてことはありえるので、プット・オプションの売りの枚数は証拠金の観点からも抑え目にした方が安全です。
プット・オプション売りのデメリット3:なかなか価格が下がらない
オプションを売っている以上プレミアムは下がってほしいです。しかし、OTMのプット・オプションはなかなかしぶといので価格が落ちてくれません。
プット・オプションの売りはデルタロングのポジションなので日経平均株価が上昇すると、オプション価格は下がるはずです。もちろん、ガンマショートなため価格の減りは緩やかになりますがそれ以外にも見落とせない点があります。
なぜなかなか落ちないのか?
それは「ベガショート」が原因です。オプション売っているんだからベガショートなのは当たり前じゃないの?って思うかもしれませんが、OTMのプット・オプションのベガショートにはちょっとした癖があります。
日経平均株価が急上昇するようなとき(例えば、日銀のサプライズ緩和など)を除けば、株価の上昇はマーケットに安心感をもたらします。適当に株を買っても儲かる状態になれば、今まで株をやってなかった人も「俺も買ってみようか!」となります。ですので、IVは低下傾向にあります。しかし、FOTMのプット・オプションだけは違います。(Deep ITMのコール・オプションも同じですが、通常取引の対象にならないので除外します。)
原資産が緩やかに上昇すると各権利行使価格(OTM)のプット・オプションのIVが上昇する傾向があります。これは「スティッキー・デルタ」と呼ばれる現象で日本の市場だけではなく米国のオプション市場でも同様のことが観測されています。
スティッキー・デルタの例
スティッキー・デルタの例です。日経平均株価が17,000円から17,500円に上昇した時にP165のIVが20%から22%に上昇し17000円の時のP160のIVの値になっています。このように日経平均株価が上がるとそれと逆方向にIVが動く現象を「スティッキー・デルタ」と呼ばれています。他の行使価格のプットオプションも同様に動きます。(※あくまで例ですので正確にこうなるわけではなく、概念としてとらえてください。)
日経平均株価 | 17,000 | 17,500 | 18,000 |
P165のIV | 20% | 22% | 25% |
P160のIV | 22% | 25% | 30% |
P155のIV | 25% | 30% | 37% |
P150のIV | 30% | 37% | 46% |
つまり、日経平均株価が上昇することによりIVが上昇し、思ったほど価格が落ちない現象が起こります。
なぜスティッキー・デルタになるのか?
この現象が起こる理由はもちろん科学的に解明されているわけではありません。ですが、心理的な面で考えると分かりやすいです。
株価は常に上がり続けることはありません。上昇が続けば続くほど過去のマーケットを知っている人たちは反動による大幅な下落を警戒しだします。そのため、その反動下落を恐れるあまりプット・オプションを買っておこうという人が増えて需要が増すのでIVが上がるという風に考えればわかりやすいです。
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